中島敦の文学作品における自我意識について―『山月記』、『文字禍』を中心に[日语论文]

要旨

中島敦（1909年～1942年）は日本昭和初期の作家である。彼は漢学家庭に生まれ、良好な漢学素養を持っており、さらに、大学の時代に、ささまざまな西洋文学と哲学知識を学んでいたため、その作品は中国古典文学の特色のみならず、西洋文学の思想も持ち、特別な文学の思想を形成された。文学生涯は極めて短かったが、優秀な作品を書いて後世に残した。代表作『山月記』をはじめ、『文字禍』、『李陵』、『悟净出世』、『名人伝』など、いずれも中国古典文学に基づいて、自分なりの考えと理解を加えて創作された作品である。これらの作品は単なる翻案作品ではなく、自分の感情が入られて、作者の文学思想が表される。また、中島敦の奇妙な経歴――子供の時母が亡くなった、継母と一緒に生活、また、喘息の病気になっていたので、このような人生経歴は、彼の文学に対して、恐らく影響がある。さらに、中島敦の創作期間はちょうど戦争の最中である。戦争の陰が恐らく彼の作品に一定的な影響を与えると思われる。

本稿は中島敦の処女作である『山月記』、『文字禍』を中心に、中島の文学中での自我意識を研究する。『山月記』の主人公である李徴と親友袁傪との会話から見ると、李徴も出世に対して、強烈的な渇望を持っているが、自分の敏感な、卑下な性格で、自分の才能に強烈的な懐疑を持って、消極的な“救助”に転向した。李徴の心理活動から、中島敦は強烈な自尊心と自分の才能に対しての懐疑で、孤高な性格が形成されたのが見える。『文字禍』について、ナブ･アヘ･エリバ博士は文字の精霊の研究中で、次第に、文字の霊に捉えて、文字の書かれた板を押しつぶされて、死んでしまうのである。ナブ･アヘ･エリバ博士は文字に対して、自我意識の限局を研究する。

従って、作品の二人の人物を通じて、孤高的な、内向的な性格を持って、戦争時代の暗み、自分の病身のままで、中島敦は文学創作の自我存在と時代、運命とのかかわりを論ずる。

キーワード：中島敦  山月記  文字禍  自我意識