要　　旨
昭和初年，ブロレタリア文学の思潮が大きく台頭してきた中で,一部の評論家たちは川端が｢古崎と共に、女性を描くことにおいては現在の日本文壇で第一人者である。｣といったものである。これ対しては、「職業をもって働く男のことを書くためには、仕事の内容は所属する職場の仕組みにいたるまで、いろいろと細かく調べる必要もあって，時には大変骨も折れるのだが、それに反して、女たちを描くには、そうした煩瑣を避けて通ることができる。だからその煩瑣を避けていこうする私の文学は，怠け者の文学ですよ」と「自慢十話」というエッセイで川端は語っている．多数の作品に女性像を描き続けてきたのは、それだけの理由からだったとは考えられない。けれども、当時日本社会で女性地位から見られば,男女を間わず、何も平等することはないから、女性の地位が低い。
川端康成文学活動の初期から戦前まで、女性向け小説を多く執筆した。作品の主人公としではほとんど少女踊子、芸者などである。女性美を褒めていたとともに、伝統的な男の川端は女性を軽蔑する気持も現れ出ている。
長谷川氏は川端の初期の作品を『伊豆の踊子』の本文で、両者を比較研究したうえで、「『伊豆の踊子』のなかには、汚濁の部分がある」という結論を下た。つまり清純で抒情詩のような『伊豆の踊子』本文で，踊子は芸者風の髪型と服装のため，十七八の娘盛りに見えていたので、「私」は、「あんな者、どこで泊るや分るものでございますか」という甚だしい軽蔑を含んだお婆さんの言葉に煽りたてられて、「空想」を持っていた。この「空想」とは、「踊子を今夜は私の部屋に泊らせる」と思ったことである．女気のない家庭でおおきくなった川端は、女性にたいする好奇心が人並み以上に強かったと考えている。そればかりではない、川端また別の一面を持っていた。

キーワード　日本女性形像; 戦後; 女性美;