『痴人の愛』から見た谷崎潤一郎の美意識_日语论文

要旨

谷崎潤一郎（1886−1965）は耽美派の作家として独特な作風の小説で目覚しい成績を収め、世界によく知られる。彼の前期の作品風格は西洋崇拝の「悪魔主義」と言われたが、後期作品風格は日本の古典美に回帰した。『痴人の愛』は転換期のピークの作品と思われる。また、彼の作品には鮮やかな特徴があり、永井荷風はその特徴を「肉体恐怖から生ずる神秘幽玄である」と指摘する。この特徴も『痴人の愛』の中で体現されている。

小説のあらすじについて、普通の電気技師「河合譲治」がカフェで働いたナオミという少女を自分好みの妻に育てようと引き取り、最後にナオミに翻弄され、人生が破滅していくというものである。

本論文では、『痴人の愛』の人物性格、小説内容から谷崎潤一郎の独特な美意識を研究しようとする。第一章は谷崎潤一郎の人生経歴と小説のあらすじ及び人物像を紹介する。第二章は小説内容に着手し、譲治がナオミ肉体に夢中になることと二人が西洋文明を模倣すること、及び譲治が最後に日本伝統に回帰することについての内容を読み解き、谷崎潤一郎がこの作品の中で流露している女性の官能美、主人公の西洋崇拝、古典回帰という美意識を分析する。また、谷崎潤一郎の前期作品は西洋崇拝と官能美を追求するが、『痴人の愛』では「古典美」が流露する。だから、第三章は作者が東京震災で関西に移住した経歴と結びつけて「古典回帰」の原因を分析し、関西風土が谷崎潤一郎の美意識への影響を説明しようとする。

キーワード：痴人の愛；谷崎潤一郎；官能美；西洋崇拝；古典回帰 

目次

はじめに 1

1.谷崎潤一郎と『痴人の愛』 2

1.1『痴人の愛』について 2

1.1.1あらすじ 2

1.1.2人物像 3

1.2谷崎潤一郎について 3

2.『痴人の愛』における美意識 4

2.1ナオミの官能美 4

2.2主人公の西洋崇拝 5

2.3譲治の言語から見た古典回帰 6

3. 谷崎の古典回帰について 8

3.1関西移住 8

3.2関西移住後の作品 9

終わりに 10

参考文献 11

謝辞 12