谷崎文学における「妖婦」について—『刺青』と『痴人の愛』を中心に[日语论文]

要旨

女性は谷崎文学の初期から後期までの貫いたテーマである。谷崎文学では、数多くの女性像を良く描き出す。これらの女性は、日本古典美から西洋的な風格まで、娼婦型から良家型の型まで、それぞれの特徴を持っている。その中で、「妖婦」のタイプは谷崎文学の中で最も特色のある女性像であり、彼女たちは驚くほど美しい顔と残酷な心を持っていて、男性の前では高い誘惑力と支配力が現れて、美と悪の結合体である。

谷崎文学における女性像の研究の数は多いが、主に単一の女性キャラクターに対するイメージ研究や、谷崎文学における女性の全体像の概説である。専門的な「妖婦」についての研究は数少ないと言える。代表的な先行研究は章（2010）、福田（2011）。それらの研究は妖婦の特徴について分析に重視し、人物像の表現する方法や、女性観などのイデオロギーに関する部分はまた検討する余地がある。

本文は「はじめに」、「おわりに」と四章で構成されている。まず、「はじめに」は研究の背景、研究の対象、検討したい問題及び関連する先行研究を論述する。そのほか、『刺青』と『痴人の愛』という二つの作品を選んだ理由について説明する。

次に、第一章は谷崎潤一郎の生涯と作品の特徴を簡潔に紹介し、谷崎文学の女性のテーマを引き出し、後の論述の基礎になる。第二章では、三節に分け、人物像の概観、人物像の表現、人物に対する態度の三つの面から、『刺青』の女主人公の小娘の人物像を分析する。小娘は谷崎文学における妖婦の型の始めとして、日本古典美を持ち主であり、おとなしい女の子から残酷な妖婦に変身したという類型である。その人物の表現手法は主にクローズアップと象徴である。クローズアップの手法を通して、なめらかな足と白い肌によって小娘の美しさを表現する。象徴的な手法によって、蜘蛛の刺青の完成によって小娘が妖婦に変身したことを表現する。第三章では、三節に分け、同じの三つの面から、「妖婦」の集大成者、『痴人の愛』の女主人公のナオミの人物像を分析する。ナオミは西洋の風格であり、美と悪の極致の化身である。『痴人の愛』の人物表現はより具体的で、主に外貌、服飾、動作と心理四つの面によってナオミの「妖婦」という人物像を表現する。第四章は小娘とナオミの人物像の特徴のまとめである。そして、女性の地位という視点から、その中に隠された女性観とイデオロギーを分析し、男性中心主義と反男性中心主義の二重性と主張する。

最後、「おわりに」の部分は、論文のまとめと今後の課題を述べる。

キーワード　谷崎潤一郎 人物イメージ　女性像　女性観  妖婦