はっきりした表現を避けることは日本語の一つの大きな特質だと思う。これは省略表現である。『新明解国語辞典』の中に、省略の解釈は以下の通りである。省略:①繰り返すまでもないと思われる部分を、表出しないで済ませること。②表現しなくてわかってもらえる(しない方がよい)と思われる部分を、表出しないで済ませること。多くの研究者から省略表現については、本、雑誌や論文など沢山の研究成果を出しているのだが、ここに自分が読んだ限りの資料のいくつかについて列挙し、内容を紹介しておきたいのである。
『日本語言与交際入門』という本は省略表現が曖昧性の要因だと論じている。NHKの会話から省略表現を説明した。作者はいくつかの省略表現を挙げながら省略の機能と表現意図を説明している。この説明を見て省略された部分が極めて大切な意味を担っているのが理解できる。それに、場面を考慮した省略表現を適切に理解できるような応対が必要である。また、この著書は主語や目的語の省略を分析した。最も特徴的なものは挨拶語である。尊敬語や謙譲語などにも関連しているようだ。
『日本本科論文写作指導』には北京外国語大学日本語基礎教研室が編纂した『日本語会話』に出る省略例についての説明があった。それらの例文を省略された内容から分類して大体七類である。主にどんな時に省略が必要だかと書いてある。その内容は大体文中或いは文末の内容によって、分類される。自然な会話における文頭の省略についても調べた。作者はシナリオ集と文字化した資料に見られる文頭省略にしぼって論じた。この本を読んだあとで、話し言葉の特性や日本の国民性が省略現象の主な二つの要因が分かる。省略現象を応用する意味についても作者が分析を行った。
日常会話における省略表現は日本人の日常生活でよく使われる。日本语の省略表現についての一考察という文章は日本人とコンミュニケーションするとき、正確に省略表現を使うことが重要であることを述べた。この論文は日本語の主語省略文、格助詞省略文、述語省略文について検討した。まず、日本語の会話文における主語の省略を説明した。また、英語や中国語と比べて、日本語の主語の省略を検討した。「を」「が」などの助詞を省略するのは会話にとって一番自然だと書いている。それに、日本人は相互理解を前提として述語もよく省略される。この論文は「どうも」という万能言葉を挙げていろいろな婉曲的に省略した言外の意味を説明した。この論文を読んで、省略表現は日本語の中で大切な地位を占めていることが分かる。
また、「主語省略における日中両言語の対照研究」という論文は主語省略における日中両言語の対照研究である。村上春樹の『ノルウェイの森』を資料として、日本語原文に多く見られる「主語省略」が中国語訳文にはどのように反映されているかを調査し、どのような場合に「主語が省略」されているかを比較検討したものである。また、唐代伝奇小説を対象として「主語省略」を研究して、「敬語表現による主語の省略」が一番特徴的である。この論文の結論としては①中国語に比べて日本語には「主語省略」が多い。②特に人称代名詞の省略が顕著である。③中国語に翻訳される場合、人称代名詞、とりわけ三人称代名詞主語の補足が顕著である。
最後に、『黒龍江史誌』という雑誌では日本語によく出る三つの省略表現を挙げて分析を行った。婉曲的な省略、人称代名詞の省略、両方共知の部分の省略である。作者によると、こんなに多くの省略現象が現れるのは文化にも関係がある。伝統文化の影響で、仲間うちでは、以心伝心の傾向が高い。また、地理環境や美学観念もその一因である。作者は加藤周一の話を通して省略現象の原因を分析した。日本人の集団意識が強いので、人称をよく省略されている。言語は文化交流の主な形式であるから、伝統文化のその特性は日本人の言語に影響を与える。