先行研究

色彩語については、昔から様々な分野において、様々な方法によって研究が行なわれてきた。その中には、アメリカの文化人類学者BerlinとKayの『基本色彩語、その普遍性と発展』は一番権威性のある成果だと言える。彼らは実地調査及び文献調査を通して、世界の９８種の言語を比較したあと、二つの概念を提出した。即ち焦点語（basic level terms）と基本色彩語（focal color）。彼らは色彩語の意味の不連続性を否定し、意味の立場から見る連続性と色彩範疇の普遍性を説く。それに、言語の進化によって、基本色彩語がだんだん分化し、その語の焦点となる色には言語を超えた普遍性と思われる。BerlinとKayの研究によると、異なる国の色彩語の中に、十一種類の色がいっそう普遍に使われる：白（white）、黒（black）、赤（red）、緑（green）、黄（yellow）、青（blue）、紫（purple）、ピンク（pink）、オレンジ（orange）、灰（grey）、褐（brown）。そのうえ、使用頻度の次第によって，秩序がある。

日本では、国語文学者佐竹昭広氏の『古代日本語における色名の性格』は、万葉集の文献を引用し、古代日本語で使われた色をいろいろ究明した。その結果、日本でもっとも純粋に色を表す言葉は赤、黒、白、青であるという結論が出た。この四つの色の意味は明（アカ）、暗（クロ）、顕（シロ）、漠（アオ）で、すなわち、日本のもっとも基本的な色彩語彙はこの四つだけであると認定した。そのほかに、紫、紅などような色彩語は、もともと染色の染料の植物名であり、その後だんだん色名になったわけである。佐竹昭広のこの論説は、もう一般的に認められる。

福田邦夫の『すぐわかる日本語の伝統色』には、異なる時代（奈良時代、平安から室町時代、桃山江戸時代）における伝統色に人間はどんな感情を持つかという研究を行なった。彼は各時代の結果をまとめ、最後赤は畏敬な色、青は生命と希望に満色、黄は控えめに使用された色、白は神事に関わる聖たる色、黒は身分の低い者が着用したという結論を導き出した。この研究は色彩語の産生と使用、日本人の暮らし方、伝統習慣と社会意識なども分析した。

鈴木孝夫は彼の『言葉と文化』には、「文化が違えばことばも異なり、その用法にも微妙な差がある」、「人称代名詞や親族名称の用例を外国語の場合と比較することにより、日本語と日本文化のユニークさを浮き彫りにし、ことばが文化と社会の構造によって規制されることを具体的に立証して、ことばのもつ諸性質を興味深くえぐり出す」といった。それに、第二章に書いた「はじめに言葉ありき」、それは「ものという存在が先ずあって、それにあたかもレッテルを貼るような具合に、ことばがつけられるのではなく、ことばが逆にものをあらしめているという見方である」というのです。また、言葉は人間と対象との関係によって決定されるものであり、それは文化によって異なるものなので、外国語を日本語にただ直訳すると意味が通じないこともあるんだな、なんてことも納得いきました。

中国の鲁宝元の『中国语言中国文化汉语与中国文化』はこのように述べた。言葉と文化を組み合わせて研究するブームの出現には深刻な理由がある。それは言葉と文化には切っても切れない溶け合う関係があるからである。一方では、言語は文化のキャリアであり、ある民族、国、その社会システム、経済パターン、価値観、考え方、習慣が、常にその言語に反映されている。言葉と文化を組み合わせて研究をするのは、言語に関わる文化的現象は言語を通じて見られるからである。一方、ある民族の文化的背景の変遷は言語発達の変化に影響と制限を与える。言語と文化を組み合わせて研究をすることは、文化の視点から言語の理解を深めるということになる。特定の言語の研究を通して、その民族の特性を理解できると指摘した。

青島海洋大学の李慶祥の『中日顔色詞語及其文化象徴意義』の中にはこう書いた。文化の面において、言語の語彙表現は最も顕著で、使われる範囲も一番広い。色彩語は民族や国文化の不可欠な部分で、ユニークな言語機能や文化の象徴性を持っている。ある民族の特別な色彩意識や文化の伝統を反映する。両国の言語の象徴意義を比較して分析すると、側面から日本文化の起源を探求することができると述べた。

本文は日本語の色彩語の背後にあるものに関わる研究を試したい。というと、その色彩語の本来の意味だけではなく、その意味の背後にある文化根源を探ってみたい。研究の便宜のため、広く使われる「白」を例として考察しようとする。それに、この色彩に対する研究は両国の友好的な交流に役に立つことを期待する。