『日本沈没』に関しても、危機意識に関しても、資料がたくさんあるが、本稿を完成するため、まずは先行研究の状況を知ることにした。

一、中国学者からの研究

日本人の危機意識については、中国の学者から本、雑誌や論文などたくさんの研究成果が出てきたが、ここに筆者は自分が読んだ限りの資料のいくつか列挙し、述べる。

（一）、王　衆一の『日本災難片折射生存憂患意識』

この論文は１９７３年版と２００６年版の映画『日本沈没』を較べて、結論をまとめたものである。二つの映画は結末がちょっとした違いがあるが、憂患意識を掲示したのは同じである。そして、二つの映画の創作背景もそれぞれ分析した。１９７３年版の映画が上映した時日本はちょうど石油危機に臨んでいて、物価も日々上昇する状態が現れて、買占めブームをもたらした。更に、社会もどんどん不安になった。一方、バブル経済の崩壊と阪神·淡路大震災のため、日本はまだ回復していない内、もう一つのショックつまり２００６年版の『日本沈没』を受けられた。

（二）、周　栄の『憂患意識抑或災難感――以小松左京「日本沈没」中的殇文化為例』

この論文は小説『日本沈没』の内容に基づき、日本人の憂患意識或いは災難感を分析した。そして、それは日本社会にどんな影響をもたらしたか、それぞれのよい点と悪い点を挙げた。まずは、憂患意識は日本人の心に深く潜んでいて、長い間自分の力で精神と文化の独立を実現しようとした。それに、それも日本人の自省の動力である。日本人は一つのチャンスも逃させず、自身の発展に精一杯頑張り続けていた。しかしながら、マイナスの感情は著しい欠点である。そのため、日本人は日本社会の未来に希望をもっていないと思っている。そして、日常生活の中マイナス態度も主流になった。

（三）、王　丹、姜 楠の『透過日本災難電影看日本人的憂患意識』という文章

政治、経済とメディアの良好の発展事実は日本人の思想に憂患意識を強化した。また、知識人はその中で重要な役割を演じていることは日本人の憂患意識の原因であると総括した。本文は『日本沈没』のほか、『地震列島』と『マリと子犬物語』の映画の内容を分析して、日本人の憂患意識の現状を探求した。そして、そういう結論をした。

二、日本学者からの研究

中国には第三者の目は鋭いものという諺があるが、他人の目から見られたよりまず自分の目で認識して、問題を捉えるのも大切である。日本の学者は自分の社会の発展のため、危機意識を分析して研究をしていた。

（一）、斎藤茂吉の『日本大地震』という文章

「… …もう日本震災のための死者は五十万と註してあつた。大小の消火山は二たび活動を始め、東京・横浜・深川・千住・横須賀・浅草・神田・本郷・下谷・熱海・御殿場・箱根は全く滅亡してしまつた。政府は一部京都一部大阪に移つた。東京は今なほ火焔《くわえん》の海の中にある。首相も死に、大臣の数人も死んだ… …」本文は日本大地震の状況を詳しく述べて、大地震に対する驚愕気持ちがよくわかった。

（二）、戸坂潤の『日本文化の特殊性』という文章

「……仏教儒教が古来日本に支配的に行われたことは云うまでもないし、それがすべて旧くから教学としての意味を充分に持っていたことは勿論である……」という点で見れば、日本文化は儒教から深く影響を受けたということは事実である。それに、日本人の危機意識も儒教からもらったものである。

（三）、中井正一の『現代美学の危機と映画理論』という文章

「……映画がこれまでもった利潤性は、美学論をして講壇からおろし、政治経済、はては株式機構にまで関連をもたしめることとなってきたのである……」と述べた。それは、日本の映画は確かに政治に利用された証言と見られる。