译文:
男子一步步地走着。
穿过庄稼地,便是两室宽(约3.6米)的石子路,树枝篱笆、橡树篱笆、石楠树篱笆、在这些空隙中依次排列着玻璃拉窗、冠木门和煤气灯,庭院的松树上依旧挂着还没有卸掉的除霜绳子。再走一两条巷子就到了千驮谷,每天早晨都能碰见演习的军队奔跑着经过。西方人的大洋房、刚建的医用通道、开在茅屋里的粗点心店,来到这里,便能够看到代代木车站高高的线路,在新宿附近,一听见电车的鸣笛声,就能看到男子庞大的身躯向前倾,不管不顾地一溜烟儿跑过去。
今天男子也来到了这里,然而电车还没有要来的迹象,仍旧是急急忙忙地跑过来,在线路尽头的拐角处,忽然看到了一位穿着栗梅色丝质短外挂,美丽动人的女大学生的背影。茶绿色的彩带、繻珍花段的木屐带、崭新的白色短袜,一看到这些,男子便不由得激动兴奋,但他却什么也没说,只是一个劲儿地开心却又心神不宁,一副走到女学生前面去就觉得很可惜的模样。男子早就熟知这个女学生了,至少已经和这位女子同乘一班电车五六回了。何止这样,在冬天寒冷的傍晚,特地绕远路在女子家门口逗留的事也有过。他清楚地知道,这个女子是千驮谷庄稼地西侧,被橡木环绕着的树林深处的的大户人家的长女。眉眼娇媚、肤色白皙、微笑的时候眉眼间透露出无法言喻的美。
“怎么看也像是二十二、三岁不在上学的年纪……从每天早上碰不到她就能知道了,那她这是要去哪儿呢?”男子这么想着,光这么想就觉得很愉快了。眼前和服美丽的颜色闪烁恍惚,勾起男人心中无法言喻的情绪。“该结婚了吧”,男子如此想着,这便心生一丝寂寞与可惜,“我要是再稍微年轻点……”,又想了想,“真是无稽之谈,我都多大年纪了,孩子老婆都有了。”如此思来想去,却也不觉时而悲伤,时而喜悦。
在通往代代木停车场的楼梯处,女子超过男子走在了前面,衣服摩擦的声音以及脂粉的香味,让男子心生雀跃,然而这次他却是索性头也不回地向前大踏步跑去,直接上了楼梯。
车站的站长剪完红色往返票又还给他。无论是这位站长,亦或是其他的工作人员,都认识这个大个子男人。大家都知道他是个性格急躁、慌慌张张又说话很快的人。
男子正想去平板围成的候车室,就又看到了之前早已熟知的女学生正站在那里。
体态均匀、桃红满面、轮廓圆润,是位可爱的姑娘。华丽的条纹衣服里,穿的是酱紫色的裤装,右手拿着一柄女用的小洋伞,左手抱着紫色布包袱,男子突然意识到女孩今日的丝带与往日不同,是白色的。
这姑娘肯定没忘记我,她肯定知道我的!男子又是这番想着。
于是又向女孩的方向望去,然而女孩却是一脸茫然地看向其他地方。还处在那个年纪的女孩肯定是害羞着吧,男子这么想着,又觉得这女孩真是可爱到了极点。装作不在看的样子却又不知道偷偷看了几回,总是不停地看她。——然后又转移视线,这一回是对楼梯上走过的女子的背影入了迷。
甚至连电车来了都未察觉到。
原文:
男はてくてくと歩いていく。
田畝を越すと、二間幅の石ころ道、柴垣、樫垣、要垣、その絶え間絶え間にガラス障子、冠木門、ガス燈と順序よく並んでいて、庭の松に霜よけの繩のまだ取られずについているのも見える。一、二丁行くと千駄谷通りで、毎朝、演習の兵隊が駆け足で通っていくのに邂逅する。西洋人の大きな洋館、新築の医者の構えの大きな門、駄菓子を売る古い茅葺の家、ここまで来ると、もう代々木の停留場の高い線路が見えて、新宿あたりで、ポーと電笛の鳴る音でも耳に入ると、男はその大きな体を先へのめらせて、見栄も何もかまわずに、一散に走るのが例だ。
今日もそこに来て耳をそばだてたが、電車の来たような気勢もないので、同じ歩調ですたすたと歩いていったが、高い線路に突き当たって曲がる角で、ふと栗梅の縮緬の羽織をぞろりと着た恰好の好い庇髪の女の後ろ姿を見た。鶯色のリボン、繻珍の鼻緒、おろし立ての白足袋、それを見ると、もうその胸はなんとなくときめいて、そのくせどうのこうのと言うのでもないが、ただ嬉しく、そわそわして、その先へ追い越すのがなんだか惜しいような気がする様子である。男はこの女を既に見知っているので、少なくとも五、六度はその女と同じ電車に乗ったことがある。それどころか、冬の寒い夕暮れ、わざわざ廻り路をしてその女の家を突き留めたことがある。千駄谷の田畝の西の隅で、樫の木で取り囲んだ奥の大きな家、その総領娘であることをよく知っている。眉の美しい、色の白い頬の豊かな、笑う時言うに言われぬ表情をその眉と眼との間にあらわす娘だ。
「もうどうしても二十二、三、学校に通っているのではなし……それは毎朝逢わぬのでもわかるが、それにしてもどこへ行くのだろう」と思ったが、その思ったのが既に愉快なので、眼の前にちらつく美しい着物の色彩が言い知らず胸をそそる。「もう嫁に行くんだろう?」と続いて思ったが、今度はそれがなんだか侘しいような惜しいような気がして、「己も今少し若ければ……」と二の矢を継いでたが、「なんだばかばかしい、己は幾歳だ、女房もあれば子供もある」と思い返した。思い返したが、なんとなく悲しい、なんとなく嬉しい。
代々木の停留場に上る階段のところで、それでも追い越して、衣ずれの音、白粉の香いに胸を躍らしたが、今度は振り返りもせず、大足に、しかも駆けるようにして、階段を上った。
停留場の駅長が赤い回数切符を切って返した。この駅長もその他の駅夫も皆この大男に熟している。せっかちで、あわて者で、早口であるということをも知っている。
板囲いの待合所に入ろうとして、男はまたその前に兼ねて見知り越しの女学生の立っているのをめざとくも見た。
肉づきのいい、頬の桃色の、輪郭の丸い、それはかわいい娘だ。はでな縞物に、海老茶の袴をはいて、右手に女持ちの細い蝙蝠傘、左の手に、紫の風呂敷包みを抱えているが、今日はリボンがいつものと違って白いと男はすぐ思った。
この娘は自分を忘れはすまい、むろん知ってる!と続いて思った。そして娘の方を見たが、娘は知らぬ顔をして、あっちを向いている。あのくらいのうちは恥ずかしいんだろう、と思うとたまらなくかわいくなったらしい。見ぬようなふりをして幾度となく見る、しきりに見る。――そしてまた眼をそらして、今度は階段のところで追い越した女の後ろ姿に見入った。
電車の来るのも知らぬというように――。