译文:
拿到年终奖的加奈江正打算从公司回家,看到走廊里剩一名男员工独自闲逛十分可疑。当加奈江靠近楼梯两三步的时候,这名形迹可疑的男员工竟然跑到加奈江面前,猝不及防地扇了她一巴掌。
啊!加奈江被打了个踉跄。同事明子和矶子都被这突如其来的一幕惊得目瞪口呆,仅直勾勾地盯着看。突然,这名男子在她们面前披上外套飞奔而去。
“堂岛,等一下”明子突然想起男子的名字,大叫道。出于对该男子粗暴行为的愤怒,对这件事无论如何都不能放任不管,明子和矶子一起偷偷看向了不安的加奈江。看着加奈江被打的脸颊肿了起来便立刻跑下楼梯去追堂岛。
可是,堂岛已经倚着扶手飞一般滑到楼下。她俩一边一脸激动骂着堂岛“真是乱来,太过分了”,一边回到加奈江身旁。
“他跑远了吗?算了,明天来了让课长帮忙作证……就算这样我也不会原谅他。”
加奈江红肿的左半边脸上闪着泪光,气得嘴唇痉挛似的颤抖着小声嘟囔道。
“恩恩,就这样。你记得之前有被堂岛这样扇过吗?”
矶子那样问的时候意识到说错了话,眼神透着不安和试探。
过了一会儿加奈江瞪着矶子说道:“当然没有啊,但是上周课长不是说别和男员工说那些有的没的,我只是没有理他而已。”
“恩恩,是啊,那就干脆一口气做到底吧,我支持你。”
矶子努力用之后的态度来弥补自己拙劣的谈吐。
“那今天就先回去明天再说吧。虽然有点绕路,但我今天就坐加奈江的那班车一起回去吧。”
明子家在青山却这样提议,加奈江转向明子。被打的左半边脸失去了知觉,一坐上电车就变成了偏头痛,再加上左眼泪流不止,加奈江一路上也没抬头,也没和明子说话。
第二天早上,加奈江刚吃完早饭明子就来了。她看了看加奈江的脸,安慰道:“太好了,没留下伤疤。”但加奈江明显还是不太高兴。
“但是昨晚太不甘心了,加上头痛都没睡好。”
两人坐上电车。加奈江一想到今天要在课长办公室为昨天的遭遇据理力争,整个人都开始发抖,为了缓解情绪她将头探向窗外。
原文:
年末のボーナスを受取って、加奈江が会社から帰ろうとした時であった。すると廊下に男の会社員が一人だけ残ってぶらぶらしているのが見え、少し不審に思えた。しかも加奈江が二、三歩階段に近づいたとき、その会社員は加奈江の前に駆けて来て、いきなり彼女の左の頬に平手打ちを食らわせた。
あっ!加奈江は、仰け反ったまま右へよろめいた。同僚の明子も磯子も、余りに咄嗟の出来事に眼をむいて、その光景をまじまじと見つめているに過ぎなかった。瞬間、男は外套の裾を女達の前に飜して階段を駆け降りて行った。
「堂島さん、ちょっと待ちなさい」明子はその男の名を思い出して上から叫んだ。男の、加奈江に対する乱暴への憤りと、こんな事件を何とかしなければならないという焦った気持から、明子と磯子はちらっと加奈江の方の様子を不安そうに窺った。加奈江が倒れもせずに打たれた頬をおさえて固くなっているのを見届けてから、急いで堂島の後を追って階段を駆け降りた。
しかし堂島は既に遥か下の一階の手すりのところを滑るように降りて行く。彼女らは「無茶だ、無茶だ」と興奮して堂島を罵りながら、加奈江のところへ戻って来た。
「行ってしまったんですか。いいわ、明日来たら課長さんにも立会って貰って……それこそ許しはしないから」
加奈江は赤く腫れ上った左の頬を涙で光らせながら、恨めしそうに唇をぴくぴく痙攣させて呟いた。
「それがいいわ。あんた、堂島さんにこんな目にあわされる覚えはあるの」
磯子がそう訊いたとき、磯子自身ですら悪いことを訊いたものだと思うほど、不快な、お互いを探り合うような表情で眼を光らせた。
間もなく加奈江は磯子を睨み
「無論ありませんわ。ただ先週、課長さんが男の会社員とあまり要らぬ口を利くなっておっしゃったでしょう。だからあの人の言葉に返事しなかっただけよ」と言った。
「あら、そう。なら、うんとやっつけてやりなさいよ。私も応援に立つわ」
磯子は自分のまずい言い方を今後の態度で補うとでもいうように力んでみせた。
「じゃ、明日にして今日は帰りましょう。私少し遠回りだけれど、加奈江さんの方の電車で一緒に帰りますわ」
青山に自宅がある明子がそう言ってくれるので、加奈江は明子の方へ向かった。
殴られた左半面は一時痺れたようになっていたが、電車に乗ると偏頭痛にかわり、左方の眼から頻りに涙が零れるので加奈江は顔も上げられず、明子とも口が利けなかった。
翌朝、加奈江が朝食を食べていると明子が立寄ってくれた。加奈江の顔をちょっと調べてから「まあよかったわね、傷にもならなくて」と慰めた。だが、加奈江には不満だった。
「でもね、昨夜は悔しいのと頭痛でよく眠れなかったのよ」
二人は電車に乗った。加奈江は今日、課長室で堂島を向うに廻して言い争う自分を想像すると、身体が震えそうになるので、それをまぎらすために窓の外に顔を向けてばかりいた。