译文:
来到东照宫的鸟居前,无意间再次回望身后时,果然那个少年还是紧紧跟着我,可这次的距离更加短了,终于在二十来米之后他就迫近到了我的身前。我吓得心里扑通一跳,倒吸了一口凉气。他明显是有敌意地冲着我来的。他的样子绝不简单,这已经不是那可怜的猪的后裔了,而是一匹渴望鲜血的恶狼。他眼里迸发着腾腾的杀气,露出的獠牙泛着白光,脸上的脓液就像是吃完活物之后被溅上的鲜血,紧紧地贴在身上的脓包就好像是真正的狼皮,每一根毫毛都狂暴地到竖起来,就像是在展示自己猛烈的斗志。敌人究竟是为了什么而盯上了我,是怨恨吗?对此,我倒没什么记忆。还是为了抢东西?我裤子口袋里确实塞了个钱包,但是里面也没装着几张钱。是为了啖食我的鲜血?这样说的话,我的身体应该比我干瘪的钱包还要贫弱。但是所有的人的伦理怕是没理由在狼身上也能通用吧。不论是为了什么,现在我眼前的敌人正盯着我,向我冲来,这就是事实,令人害怕的事实。
我尽量得保持冷静不慌张,强迫自己用那蹒跚的脚步,向东照宫境内跑去。我已经连回头看的时间都没有,我知道敌人正不断地向我迫近。袭击的气势在我的脊梁骨上不断地炸裂开来。四下连个人影都没有。树木零零星星的连个遮挡都没有。阳光依旧强烈,不断地向我照射过来,我浑身湿得好像浮在一层油腻腻的汗液之上。
好不容易跑进了正殿的后面。悬崖过道下面有一座有着几户人家的小镇。但是我已经没有走那条道的时间了。敌人的呼吸声、咬牙声,正尖锐地刺激着我的耳膜。突然一跳,敌人到我的距离已经近得足以咬住我的后背。我焦急地想要跑到有人家的地方,但是那却正中了敌人的计谋。现在的情形是我已经被追赶到这最适合洒血的草丛和红土地上。如果我一边茫然地发出求救一边逃跑的话,那才真正是末日。但即使我不那么做,结局肯定也是一样的吧。不管走哪条路,他也一定会盯着我的喉咙向我飞扑过来。已经到了连摆出回头迎击的姿势的时间都没有的地步了。这时,我手中只有一个小包袱,包袱里只有一张纸。恐怕不久便是流传在那灭亡世代之中的诗文历史的缺失之际了,虽然现在还只是一张白纸,一张薄薄的不值钱的东西。我不得不拿着这张白纸,去和那恶狼的爪牙相博斗。真可谓是穷途末路。
原文:
東照宮の鳥居のまえに来て、またなにげなくふりかえると、やはり少年がうしろに、今度はぐっと距離をちぢめて、つい十間ほどあとに迫っていた。わたしはぎょっとして息を呑んだ。明らかに敵はわたしをつけて来ている。その形相がただごとでない。これはもうあわれな豚の裔ではなくて、血に飢えた狼にほかならなかった。眼に殺気がほとばしって、剥き出した歯が白く光り、顔のウミは生餌などを食ったあとの返り血を浴びたようにあかぐろく、肌にぴったり貼りついたボロはほんものの狼の毛皮そっくりに荒く逆立って、猛烈な闘志を示している。いったい敵は何のためにわたしを狙っているのだろう。怨恨か。こちらの身にはおぼえがない。物取りか。ずぼんのポケットに財布が押しこんではあるが、中みはしごく軽い。わたしの生血か。それならば財布の中みよりも一そう貧弱なはずである。しかし、すべて人間側の論理は狼側に通用するわけがないだろう。何のためにしろ、敵がわたしを狙って飛びかかろうとしていることは眼前のおそるベき事実であった。
わたしはなるべくあわてないように、しいてゆっくりした足どりで、東照宮の境内にはいって行った。もうふりかえって見るまでもなく、敵の次第にまぢかに肉薄して来るのが判る。襲撃の気勢がわたしの背骨にひびいて来る。あたりにはひとの影もない。木立はまばらで、楯として頼むにたりない。日ざしはあいかわらず強く、じりじり照りつけて来て、わたしはあぶら汗で浮くように濡れた。
ようやく拝殿の裏手まで来た。崖の道をおりれば、家並のつづいている町である。しかし、もはやその道をおりて行く余裕はない。敵の吐く息、鳴らす歯の音がするどく耳を打って聞える。ついー飛びで、敵はわたしの背中に噛みつきうるほど近くに迫っている。わたしははやく人家のあるところに出ようとあせっていたが、それがかえって敵の術中に落ちて、ここの草むらと赤土の上、もっとも流血に適した場所にまで追いつめられたぐあいであった。うっかり声をあげたり駆け出したりすれぱ、それこそ百年目である。またそうしなくても、おなじことだろう。どのみち、敵はわたしののど笛を狙って飛びかかって来るにちがいない。もうふりむいて敵をむかえ打つ体勢をととのえるようなひまもない。このとき、わたしの手にあるものは、小さい風呂敷包、包の中のー枚の紙だけであった。それはやがて亡びた世の、詩文の歴史の残欠になるであろうと二ろの、しかし今はただの白い紙でしかないところの、うすいぺらべらしたものである。わたしはこのうすい白紙をとって狼の爪牙とたたかわなくてはならない。絶体絶命である。