译文:
这时候大脑一片空白。她那如同玻璃球一般闪亮的黑色双眸,牢牢地凝视着我。
羞耻不堪,使我两颊发热,嘴唇变干,难受的汗也流得不停。就连睁开眼睛都觉得困难。即使如此,面对她的问题,我的嘴却也想拼命地想要表达些什么,于是,“那个,你喜欢,小,小说吗?”
奇怪的问题吧。
我也这么认为。听到我这疯言乱语,周围的女生都不由呆住了。
而且,诗奈的脸也有些奇怪。
那个时候她的表情,我用语言无法变现出来。感觉,浮现于脸上的事一种遁入空虚,望向远方诗意的感觉。双眸微微睁开,睫毛动个不停,双唇裂开,都可以看见白白的牙齿。她就像被扼住了呼吸一般,话语都吐露不出。就那样的表情静止了下去。
我感觉,就像被弄坏的布偶一样。
迟迟没得到回答,我脸红得发烫,慌忙站起来,落荒逃脱一样,跑出了教室。
“额,这算什么?”
惊呆的声音不断在背后响起。不感到恶心吗?没有办法的,诗奈这么漂亮。而且那家
伙,脸都红得,诗奈怎么可能回答他呢。
不想去听这些议论的我,快步跑到走廊去,只想静一静。可一想到诗奈的双眸,一种破坏了什么美丽的罪恶感就涌上了心头。我是不是说错了什么呀?或者说,我本来就不是能搭话的人?像我这样,就不应该跟那些全身都闪耀着金光的人接触。
“是吧,果然不行呀。”
在车站附近一家以棕色为基调装饰的咖啡厅似的的地方,貌似吸引着不少女顾客。河梵小姐这时恰恰也在。她将视线再一次落到摊开在桌子上的复印纸上,像是在思考一般念念有词。然后,她又一次抬起了头。
一个大概25岁左右的女性。可是,岁数这个东西不能直接问的,想来应该更大些吧。她有着一头稍微染过明亮色的头发,剪得整齐的头发,长度刚好到可以看到后颈,还有一堆知性的双眸。
“这样呀,河埜小姐,一如既往的严肃嘛。”
“哦哦!”
“是不是没看过这么多无聊情节?”
“恩,可能是做了漫画之后缘故吧。”
可是,在说话中,河埜小姐突然探出身子对我说。
“千谷君,你真的想这样写吗?这些话能表达什么?写这些话为了什么呢?这些东西,文章完全没有传达到呀,对吧?”
“是想写……”
“让你试着写的前文,也完全不能不吸引人。这还是千谷一夜的文章吗?这样能合适吗?这样的文章,都完全可以认为是劣等品了”
“对不起。”
“行啦,你的心情我也明白。”
双腕扣在一起的她,果然一脸无奈的笑着看着我。
千谷一也,知道这个小说家名字的人,即使喜欢读书的人群中,都是稀有。
这是当然的,完全卖不出书的作家罢了。
原文:
頭が真っ白だった。硝子球のように光沢ある黒い双眸が、じっと僕を見つめている。
羞恥に頬は熱く、唇は乾き、いやな汗が全身から沸き立った。眼を開いていることすら難しい。それでも彼女の問に対して、僕の唇は必死に反応しようとしていた。「その‥。小説は、好き、ですか」
奇妙な問だったろう。
僕もそう思う。僕の素っ頓狂な言葉に、周囲の女の子たちは呆気にとられている。
そして、こゆるぎしいなはー。
その時の彼女の表情を、僕はうまく表現できない。そこに浮かんだのは、空虚であり、懐古だった。双眸が微かに開き、睫毛が動く、唇が割れ、白い歯が覗くが、息を詰まらせたかのように言葉は零れない。そんな表情で、彼女は停滞したのだった。
まるで、壊れてしまった人形のようだと思った。
顔の熱さに耐えられず、僕は慌てて席を立った。逃げるように教室を去っていく。「え、なにあれ」
呆れたような声が背中を擽る。気持ち悪くない?仕方ないよ、こゆるぎさん、可愛いもん。あいつ真っ赤になってて、マジウケたんだけれど。
声を振り切り、廊下を早足で歩く。こゆるぎしいなの瞳を思い返すと、なにか美しいものを破壊してしまった罪悪を強く感じた。なにか悪いことを言っただろうか。あるいは、そもそも、僕が声をかけていい相手ではなかったのだろう。僕のような人間は、きらきらとした陽向にいる人たちと、きっと触れ合うべきではないのだから。
「そうね。駄目だと思う」
駅近くの小洒落たカフェらしく、ウッドブラウンを基調とした店内は女性客に人気があるようだった。河埜さんはテーブルに広げたプリント用紙にもう一度視線を落とすと、考え込むように微かに唸った。それから、もう一度顔を上げた。
二十代半ばの女性だ。たぶん。しかし、聞いた経験を遠慮すると、実際のところはもっと上なのだろう。微かに明るく染めた髪を首筋が覗く程度に肩で切りそろえており、理知的な双眸は大きい。
「そうですか‥。河埜さんって、結構厳しいですよね」
「そうかな」
「いえ、あんまり、プロットに駄目出しされた経験ってないので‥」
「うーん、もしかしたら、漫画作ってたときの癖かも」
でもね、と言葉を続けて、河埜さんは身を乗り出してきた。
「千谷くん、本当にこの話を書きたい?この話で表現したいことって何?この話を書いてどうしたいの?そういうの、ぜんぜん伝わってこないんだけれど、どうかな」
「それは」
「試しに書いてくれた冒頭も,ぜんぜん熱がこもってない。こんなの、千谷一夜の文章だとは思えない。絶対、適当に済ませたでしょう?そういうの、良くないと思うな」
「すみません」
「まぁ、気持ちはわかるつもりだけれどね」
腕を組んでこちらを見る彼女は、やはり困ったふうに微笑んでいた。
千谷一也――。
その小説家の名を知っている人間は、読書好きであっても稀少だろう。
当たり前だ。ぜんぜん売れていない作家なのだから。